上質な男とH
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上質な男とH

未散ソノオ

もう私の私がすごい私になっちゃってる 笑

ネタバレ
2024年3月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ ソノオ先生の公僕BL,好きなんです。普段、国民のため、より良い国をつくるため、という志のために知力も体力も使い果たすような激務をこなしている男たちが、こと恋愛になってしまうと少しポンコツで可愛い一面を見せてしまうというギャップがツボで。

本作も、黒髪のマルサ、続木と徴収対象の老舗会社の三代目社長、で上質な男、中原のCPという、ある意味、道ならぬ恋をと描いているのです。
かたや「ハイエナ」と呼ばれる脱税に目を光らせ、悪い奴から税金をむしり取るのが趣味の国税専門官と、かたやその続木にがっぽり追徴課税を徴収された会社の社長。
普通に考えたら、まさに天敵。BLで描くなら狸と狐の化かしあいのような、丁々発止のやりとりの末にケンカップル誕生、となりそうな設定なのに、そうはならないのがさすがソノオ先生。

まず中原社長の一人称が「私」なのがイイんです。そんな一人称を使う男性がどれくらいの割合でいるのか知らないけれど、それが似合う育ちの良さが漂っていて、続木の仕事に対するリスペクトもできる男なのに、続木を「キキちゃん」と呼んで欲情するときにはちゃんとオスの顔になってるのよ…。いよいよ切羽詰まってきても「私」を崩さない結果、「私の私がすごい私になっちゃってる」って迫る姿に(…そこでも「私」なんだww)とニヤケが止まらん!

とはいえ、公僕が職務上の関係者と、一緒に飲食、一緒にお泊りって、職業倫理上大丈夫なの?と、どっちかというとそっちの関係にハラハラしながら読み始め、いろんなシチュでのエチシーンの連続に「そういう心配のいらないファンタジーなのかな?」と思ってきた頃、突然やってきたのです。2人を引き裂く出来事が。

短編集なのですが、好きなのは2人のなれそめを描いた「上質な男と初めてのH」(キキちゃんのつむじ可愛い&ホクロがエロい…)、と2人の関係の危機を描いた「上質な男と最後のH」。キキちゃんにとっては中原社長は代え難き存在であるのに、いつでも代えが効く3代目社長だと思っている中原のキキちゃんからの思いを信じ切れないすれ違いがなんとも切なくて。最後まで読むとお互いにリスクがあることは分かりながら、それでも離れられない存在となっていたんだとシミジミ。ツンデレ毒舌キャラのキキちゃんが弱って素直になる姿が、むちゃくちゃそそるんだな、これが。公僕萌の同志よ、是非!
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