わが美しきヴィクター【単行本版(電子限定描き下ろし付)】
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わが美しきヴィクター【単行本版(電子限定描き下ろし付)】

鹿島こたる

美麗な絵と圧倒的世界観で語られる主従もの

ネタバレ
2024年3月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 富豪の孫息子ブラッド•ロックウェルは、友人と賭けをします。「野蛮な獣を理性的な人間に再教育できるか」ブラッドは富豪達の慰みのために戦う闘士の一人を買い取ります。ブラッドは、ストリートチルドレン出身で教育も教養も無く、殴られることで食事を与えられていた男に自分を抱かせ、ヴィクターという名を与えるのでした。美しく退廃的なブラッドの命令でヴィクターの教育が始まります。泥に塗れた自分の人生に突如燦然と現れたブラッドの眩しさに身も心も焦がれ、ヴィクターは読み書きから上流階級のマナー、ブラッドの世話まで懸命に身につけてゆきます。祖父の偏愛にスポイルされたブラッドと、奴隷同様の生活を強いられてきたヴィクター、真逆の境遇の中に共通する孤独が二人を強く結びつけてゆきます。どこまでもプライド高く、時にはヴィクターの心も踏み躙るブラッドの幼さと、ブラッドに何をされても静かに受け止めるヴィクターの大人さは、二人の主従関係とはねじれの状態で、歪んだ形で繋がる二人の世界が圧倒的世界観をもって美麗な絵で語られます。ちなみにヴィクターの名の元となったアヴェロンの野生児は、性欲が理解できずに発作を起こして終わっていたそうです。
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