このレビューはネタバレを含みます▼
溺愛で執着で切ない。そして考えさせられる、読み応えのある話。運命って「自分の意志に関係なく身にかかる吉凶禍福のめぐり合わせ」のことだから、運命の赤い糸ってのは「意識しなくても自然な形で成就の『機会』が巡ってくること」にすぎないんですよね。だからこそ、その機会を活かさないという選択肢も取り得るし、機会さえあれば好きになるというわけではない。「糸は感情を強制しない」というのは、そういうことなんですよね。それを知りながら、薫がなかなか糸を切ろうとしなかったのは、(原さんの為でもありつつ)原さんを失ったときの言い訳になるから。原さんは溺愛で執着なんだから、あとは薫だけ。小指だけで繋がる細い糸と、お互いに意志を持って全部の指できつく握りあった手のどちらが強いかなんて一目瞭然。最後のシーンから作者さんのそんな思いが伝わってきます。糸の相手よりも先に出会うという巡り合せもまた運命ですよね。薫はかわいいし、原さんの甘やかしっぷりも最高。