イノセント ベル【コミックス版】
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イノセント ベル【コミックス版】

シリーズ3作目、婿養子の叔父×運命の番

ネタバレ
2024年5月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「シークレットノート」「ハイドランジアケージ」に続くシリーズ3作目、雨情の叔父の朝陽とヨヒラを拾ったトトキのお話。
「ハイドランジアケージ」の雨情とヨヒラが出会うきっかけとなった叔父・朝陽の事故。前作で謎に包まれていたその事故に繋がる朝陽とトトキの出会いから、事故後の二人を描いています。上巻では、恵まれない環境の中で強く生きるトトキと運命の番として出会ってしまった朝陽、二人の苦悩と愛が辛く厳しく展開されます。オメガバースのお話の要素の一つである運命の番という奇跡的な出会いを、地獄のような契約システムとして描いているのが斬新であり、本能的に惹かれ合うだけでなく、生命維持として離れられないというのはとても面白いと思いました。そして、行き詰まった二人が事故を起こし、トトキが記憶障害になってしまう下巻。何の縛りもないただのαとΩとして出会えたら…という願いをこんな形で実現させるというのも、残酷でありながら現実的なパターンであり、こんな発想を思いつく作者様の力量が本当に素晴らしいです。オメガバースの世界が今までで一番身近に感じられました。
上巻と下巻で、トトキは本当に別人だし、朝陽は本当に老け込んだなと思えるくらい二人の関係は変わりました。記憶障害になる前のトトキと朝陽として幸せになって欲しかった気持ちもありますが、シリーズを通して物語の奥行きと深さが出たこういう結末は、予想の出来ない面白さがありました。そして、ヨヒラの出自に繋がる謎を残して…という次回作への伏線をはってという最高のタスキを繋いだと思います。
シリーズ次回作への期待と共に、多くの人に読んでもらいたい新しいオメガバースの作品です。
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