精霊を宿す国
」のレビュー

精霊を宿す国

佐伊/吉茶

人の数だけ愛の形があると教えられました

ネタバレ
2024年5月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私は現代ものもファンタジーも好きで、プラス隠された謎やミステリー要素があればなお良しなので、過去の真相を探り当てる今作のような話は、とっても好みで面白かったです。ストーリーは、過去と現在を行ったり来たりしながら、ちょっとしたオムニバス形式ぽく進みます。ただ登場人物とカプがとにかく多いので、ネット検索などを利用して人間関係図を見ながら読み進めると整理しやすいかなと思います。
2巻くらいまでで主要カプ達の内情が分かる中で、私はダナル×ルカの話に一番感動しました。二人に強固な絆が生まれた時の心理描写の深掘りは素晴らしかったです。恋は落ちるものですから、落ちてしまえば誰にでもできてしまう…思いの丈をぶつけ合い情熱的に盛り上がるのが恋。でもそこから愛に繋がるのは、誰にでもできる事ではないとダナルとルカに教えられました。愛とは、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先して大切に思う事なのかなと。
3巻あたりから、いよいよ過去の真相に迫る内容になります。王は王の、神獣師は神獣師の、国に対する命を賭ける程に強い思い。それらは「一見同じ」に思えても、存亡の危機に直面する場面では「実は全く違う」のだと、お互いが思い知ることに…その絶望にも似た真実になす術もなく先を見通せないまま進むことを強要されるのは、どれほど辛いことでしょう。ここへ来て、やっと王の置かれた苦しい立場を知った気がしました。
4巻はクライマックスとその後の話でした。最後のSSは、それぞれのカプなりキャラなりの特性や性格が出ていて、本編のその後とはいえ少し毛色が違っていて楽しかったです。でも、明るいながらも「時は止められない」ことを意識させられ寂しさも感じました。
人の数だけ愛の形もあると教えられたような気がする、素晴らしい作品でした。
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