緑土なす
」のレビュー

緑土なす

みやしろちうこ/user

唯一無二の世界観。読後満足感ハンパなし👍

ネタバレ
2024年5月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 中国王朝史に着想を得たような独特の世界観の中で、異能でもって国を統治し敬愛を集める金髪碧眼の美貌の王レシェイヌと、山中深く文明や他人とほぼ没交渉で生きてきた足にハンディを抱える野人・足弱(あしよわ)が、愛を育んでいく物語。そしてこの足弱、育ちのせいか寡黙で控えめだが決して野蛮で品性下劣なのではなく、ほぼ無学とは言え関心事に対しては抜群の集中力で学び体得し、人を疑うことを知らず他人と接する時は誠意と敬意を忘れない純朴な男。そういう天性の人たらし的なところが、登場人物のみならず読み手の母性本能や庇護本能をくすぐります😄。一方のレシェイヌは同じ王族しか愛せない一族なのに、なぜか足弱を「兄」認定し猛烈に求愛。足弱の方は、自分が王族のわけがないと最初はこの求愛に困惑、辟易。しかしレシェイヌが自らの地位や身体を賭してまで足弱を守り愛し抜こうとする姿を見て徐々に自らの立場を受け入れていくのだが…。王族の守護団「灰色狼」と彼らの趣ある名前や、物語の進展に合わせて自然に説明される政治体制、王族の宿命や病気など、舞台となる唯一無二の世界観の創造力とそれをうまく読み手に伝えてくる文章力は素晴らしい。難を言うなら、レシェイヌの愛情表現の言葉はもう少しボキャブラリーが欲しかったかな😉。表紙や挿絵の画力も相まって、壮大な舞台の中で登場人物達が生き生きと躍動する姿を頭の中で具体的にイメージでき、読書の楽しみを堪能できました。本作はこれを書いている時点で6巻の長編ですがメインストーリーは最初の2巻で、ことに2巻ラストのクライマックスは怒涛の展開で読み手を翻弄し没頭させ、一気読みした読後の満足感は格別です😶✨。3巻以降はサイドストーリーやその後のお話という感じなので、まずは2巻読んでみることをお勧めします。ただ、無理矢理行為に及ぶシーンがあるので地雷の方はご注意下さい。
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