オレとあたしと新世界
」のレビュー

オレとあたしと新世界

古宇田エン

最強のしのぶちゃん(特別編追記)

ネタバレ
2024年6月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み終えて最初の感想は「完結してから読んで良かった」!後半かなり辛い展開が長く続くので、これを連載で追った皆さまには頭が下がります…。とにかく作品への没入度が高くて、途中で耐えることが難しく、久しぶりにクーポンも割引もなく最後まで購入してしまいました。この後半の長く苦しい展開ゆえに低い評価をつけられたりもしていますが、事故で10年も共にいながら一緒に生きることが出来なかった二人が、生じたズレに苦しみながら折り合いをつけていくためのリアルな時間のようで、私にはたまらなかったです。その間、聡いが故に東條さんの存在にすぐ気づきながら、決してそのことをマコトに知らせずに愛を伝え続けたしのぶの強さが輝いていました。可愛げのあるマコトの苦しみにはたくさんの人が気づいてしのぶを責めるのに、強いしのぶの苦しみはずっと秘められて、もうずっとしのぶの幸せをひたすら祈って読んでいました。10年も1人取り残されたことによる当たり前の孤独が、持ち前の強さと今のマコトに釣り合いたいという焦るような思いから生まれるエネルギーのせいで、マコトにも周りにもあまりわかってもらえなくて、ああこういう人現実にもいるなあ、強いって辛いとこあるよなあとしみじみ。でもしのぶはほんとに最強で、マコトのために頑張るし、マコトに近づくゲイにはきっちり牽制するし、マコトのためなら離れるといいながら自分の愛はきちんと伝えて逃げ出さない。それに対してマコトは煮え切らない様子で、しのぶちゃんを悲しませないで!とイライラしたけど、マコトはもともと自己肯定感がありえないほど低くて、だからこそ光のようなしのぶに惹かれて、しのぶの強さでしか救えなかったんだと思いました。トラウマについてしっかり話し合えたわけでもない、失った記憶が戻ったわけでもない、お互いがお互いに失望したところも解消しきれたわけでもない、だけど結局他の誰にも渡すことができないほどお互いが好きで、いろんなことはそのままに一緒に必死に生きていくことを選んだラストが本当にリアルで、「無駄なんて何一つなかったよ」のセリフに全てが救われたような気持ちになりました。素晴らしい作品をありがとうございました。(特別編追記)最後、2人の甘い様子がどうにも足りなかったのでとっても楽しみにしていた特別編。思いがけず泣かされてしまいました。しのぶちゃん、これから本当に幸せになってね!
いいねしたユーザ11人
レビューをシェアしよう!