午前2時まで君のもの
」のレビュー

午前2時まで君のもの

奥田枠

誰目線でも、切ない…

ネタバレ
2024年6月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 前向性健忘…調べたら、ホントにあった。ある時を境に新しいことが記憶できなくなる症状で外傷性の場合はこれといった治療法もないらしい。……ミチ(受)は8年前の事故でそれになった。短期的記憶はできるが一晩眠って起きると全てリセットされる。毎朝が21歳の自分。親友の恭一(攻)が大好きな自分。目の前の奥さんは知らない人…。それでも「全てを受け入れろ」という自分のスマホメモを見てそうしようと頑張るミチが明るく健気で切ない。でもやっぱり恭一が好きでキスやエチをしてしまう。でも翌朝には忘れている。自分の日記的メモを読みながら、現実と気持ちの間で周囲を傷つけていることに苦しみ、何度も涙するミチの葛藤が切ない。全て覚悟の上でプロポーズしたはずの灯も、大好きな人・ミチにとって自分が毎朝知らない人に戻ってしまうのはツライ。昔からミチが好きだったのに灯にとられ、キスしてもエチしても忘れてしまうミチを苦しめない為に、何も言わず自分だけで思い出を大切に抱えてる恭一も切ない。21歳で時が止まってしまっている我が子を受け入れ見守るお父さんの暖かさと大きな愛も切ない。みんな苦しくても優しくて…優しいから苦しんで…誰目線に立っても泣けてしまう…。結局、ミチは灯と離婚することを選ぶが、誰もそれを攻めない。謝るミチに「謝らないで」と言う…。そしてその後、ミチのメモには最低限の事実だけ残し、ミチが読んで苦しむような部分は削除。飾ってあった写真も変える。みんなの深い愛情が染みる…。みんな幸せになってほしい。灯のことは多分勤務先のイケメン歯科医が救ってくれるはず。お父さんも今のまま目の前の息子をありのまま愛していくだろう。ミチ自身は21歳の自分から抜け出せないが大好きな恭一が傍にいてくれる……そこでハタと気付く。恭一は?これから先も幸せだろうか?大好きなミチとずっと一緒にいられるのは確かに幸せだろう。でも、毎朝1番大好きだった時の気持ちのままでいるミチに対して、恭一は確実に年月を重ねていく。やがて愛の重さに格差は出てこないか?ミチが忘れても自分が憶えているから大丈夫と言うけれど、これから先、デートしても何しても「あの時は◯◯だったね…」とかいう思い出話すらできない淋しさに耐えられるのだろうか?また、ずっと先の話だがミチより恭一の方が先に逝ってしまったらミチは誰が支えるの?ああ、本当にみんなみんな幸せになってくれたらいいな
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