このレビューはネタバレを含みます▼
作品名『blanc』って、「白」って意味なんですね。
表紙も本当に素敵で、あぁ、タイトルのイメージ、と思ったけど、作品にも利人の台詞で言っていたな、と思いあたり、そして最後の2人の衣装もそうで、今回の作品を貫くテーマなんですね。気づくの遅いですが、気付いてから読むとますます利人と光の、まだ何者にもなれず立ち止まっている状況が迫ってきました。
ところどころで大切な2人の思い出、積み上げてきた時間を挟むシーンがあり、その時の熱量を感じながらの今の2人の想いを見る時、『同級生』『卒業生』は読んでおいた方がよく、本作品を読み終えたらかならず読みたくなると思います。
利人が、こんなにも光のことを好きで、かけがえのない存在であることが、痛いほど伝わりました。これまで光のアクションの方が多かったように思っていましたが、利人のやつれ方は半端なく、何度も何度も一緒に泣いてしまいました。また、光の方も前向きな性格なのに、やはり現状に確固とした自信を持ちきれずにいるが故に、指輪を返すという行動になったのかと思うと(わたしの解釈ですが)いつの間にか、現実という壁が2人を離させたように感じました。これまでゆっくりと、丁寧に時間をかけて2人の恋を見てきた私としては、離れるなんてあり得ない、と信じつつも、3年という時間の中で遠距離の2人のありようにもまた納得しました。
距離を置いた2人が、利人の母の入院をきっかけに電話やわずかな時間を共に過ごす時に、こんなにも好きがあふれて赤面するシーンのなんと初々しこと!こっちに心音が伝わりそうなくらいドキドキさせてて、ページをめくるのが惜しいくらい。あの、割といつも控えめな表情の利人が!こんなに動揺して、赤面して、もう可愛いったらありゃあしません!もちろん、光だって素敵です!利人が色っぽくて可愛いのは言わずもがなですが、光、学生の頃より格段にいい男になってますよね。もともとゆったりな、おおらかな彼ですが、光パパの登場後、あぁ、これは確実にパパのいい所もらってるな、そんなパパが好きな光は、そりゃぁ包容力あるよね。と納得させられました。2人のハッピーエンドを見つけるまでの苦しくて、甘酸っぱくて、でもそれだけではない大切なエピソードが詰まった本作は、名作と言われているこのシリーズを代表する作品だと思います。