戦国美姫伝 花修羅
」のレビュー

戦国美姫伝 花修羅

山田圭子

戦国の世に戦って生きた花、「六花」の半生

2024年6月16日
戦の場では、善人も悪人もどちらにもなり得るし、其れ其れ理屈がある。平穏を脅かす者が居て、奪い奪われが発生してしまう。死者には家族がいる。
歴史書も、書かせた人の意向が、書いた人の書物に反映される。勝者の大義名分が正当化される。逸話の誇張や史観の一方的歪み、伝聞の誤解。そんなこともよくあるから、罪人とされた人物が名君だったというエピソードが掘り起こされても驚かなかったりする。
主人公は守るために立ち上がった。まず、自分を、そして仲間を、いずれは領民を守ろうと。
少女漫画では争いを好まぬどころか、手を汚さぬ場合が多いが、本作は泣きながら不本意ながら手を染めざるを得ない状況に。
戦国時代は農民も戦に駆り立てられ、武士に使われた(足軽として)。僧兵も居た。その戦乱期の中で、外の世界を知り、自分で力をつけ、いつか多くの人の命も預かる身に。そのスケールは、どちらかというとチマチマ日常系の多い少女漫画にあっては珍しい大きさがあって小気味よかった。絵も良かった。
史実とフィクションを織り交ぜる作品は大変な突合作業あったと思われるのに、かなり自由な展開も多くて、その自由さこそが本作に面白さを足したかもしれない。数々の有名な戦いの年譜も意識しながらの、全くの創作のはめ込みに独自展開。実在した歴史上の人物達を、後世の人々の思う人物像ではない人間とすることも、各キャラに幅を与え、フィクション故の空想力を見せつけてくれた。
実は星は当初4と迷ったのだが、力作であるし、秀吉、信長、光秀の描写に「新しさ」もあり、5に。
実在したとされる忍者集団「乱波(らっぱ)」を主軸にした意欲もすごいことだなと。途中「透波(すっぱ)」(100/194)にも触れるがスマホでは「素波」との漢字表記しか出て来なかった(検索の限界か)。
全8巻(本編各巻平均186頁、各巻1頁作者ご挨拶頁とカラーイラスト数頁)、プリンセスGOLD誌2010年2月号~2013年3月号掲載。単行本化が早く2010年6月発売からで、その後コンスタントに巻を重ね、8巻完結を見越した作者あとがきを6巻辺りで読むにつけ、無理矢理な手仕舞いをさせられてない終わらせ方になっているようで喜ばしい。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!