トーマの心臓
」のレビュー

トーマの心臓

萩尾望都

透明で、深い話

ネタバレ
2024年6月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初に出会ったのは確かギリギリ10代の頃。本屋で立読みしていたら「あ、ヤバイ」とレジに直行。購入して家で存分に泣きました。
心の傷を隠すために表面上は完璧を装いながら他人に心を閉ざすユーリがあまりにも自分に似ていて。彼を想うトーマの純粋さがあまりにも真っ直ぐで痛くて。ユーリに対して友情以上恋情未満の想いを抱きながら見守るオスカーのもどかしさも伝わってきて辛くて。ユーリは生育環境のせいで「瑕疵があってはならない」と自分を厳しく縛っていて、でも自分が引け目に感じていたところに優しい言葉をかけられてふっと心が動いてしまった。それが毒だとわかるまで時間はかからなかったのだけど。意外な人物が物語の鍵を握っていたりと無駄のない設定と話の展開も素晴らしい。私はBLからひっそりと距離を置く人ですが、これだけは受け入れられるので、BLというのは抵抗あります。エロスというよりフィリア(友愛)、トーマの場合はアガペ(親の愛)に近いからでしょうか。
1回じゃ足りない。何度も読んで話の深さを味わえる話です。
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