Season
」のレビュー

Season

麻生ミツ晃

BL純文学の金字塔✨

ネタバレ
2024年7月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 少し古い時代の話。当たり前の、ほんの些細な親切を生涯ただ一つの温もりとして胸に刻み 生きる糧にしてきた男の恩返しから始まる恋物語。かつて商家の後継ぎと使用人の立場だった2人が十数年後に再会し、新たな関係を築く中で募らせた想いを ゆっくりと丁寧に紡ぎながら共に過ごすSeason。芽吹き『咲く春』、心も身体も『とける夏』、固く心を『結ぶ秋』、これまでも これからも『巡る冬』… 2人の想いが重なり結実するまでを移りゆく季節になぞらえて叙情的に描いています。「面倒くさい話が描きたい」から始まったとの事ですが「救済」が裏テーマにあったのかと思う程にヒューマンドラマの色が濃い印象を受けました。BL要素はきちんとありながらも恋模様に主軸を置き過ぎずに 当時の時代背景や松岡の暗い側面、それぞれの内面性、過去を許すまでの心の道のりを描く事でストーリーに奥行きが出て作品の完成度が上がった様に思います。とても静かで素朴でシンプルな話だからこそ 細やかで繊細な心理描写や台詞、間の取り方、場面転換や構成の巧みさが際立って、つくづく「読ませる作家さんだなぁ」と実感し 唸りました。一点だけ欲を言えば『巡る冬』で松岡の顔にシワの一本でも描いてくれたら時の流れをもっと感じられたのに… と思いました。未だに東を「坊っちゃん」呼びして注意されていた松岡ですが、きっと「あの夜」の東の姿に、優しさに、いつまでも触れていたいんだろうなぁと想像。胸に焼き付いて離れない一生の宝物なのでしょう。年上なのに主従関係を崩さない姿勢もまた萌えポイントですし、どうか暫くはこのままで。 「時間はあるな」… ですからね。じんわりと心に沁みるラスト、どうかこの幸せが何時までも続きますように。毎春 一緒に菜の花を眺められますように… (祈) あとがきに「読み切りで終わるはずが 7年かけて季節を一またぎする所まで描かせて頂けました」とあり、改めてBL業界のゆったりし過ぎ?な時間軸に驚かされましたが、いくら時間が掛かろうと2人の行く末を見届けたい!と言う読者の声が担当さんと麻生先生の背中を押したんでしょうね。派手さは無いけれど、7年間じっくりと熟成させた深い味わいを感じられる素晴らしい作品でした😊
いいねしたユーザ8人
レビューをシェアしよう!