星空を見つめたそのあとで
」のレビュー

星空を見つめたそのあとで

季田ビスコ

優しさに溢れた物語

ネタバレ
2024年7月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人によっては、車椅子であること、同性同士であることの葛藤をもっと掘り下げてと言うかもしれない。でも、あくまで推測ですが、作者さんが描きたいのはそこではないのかもと思いました。
何かを諦めつつ生きていくことも、人を好きになることも、誰もがしていること。すばるは決して特別ではない。手帳を持たずに暮らしてる私たちも同じ。車椅子の青年、でなく、宮沢すばるというひとりの人間がその気持ちをどう受け止めて、乗り越えるのか、傍らに置いて見つめるのか、そこが主眼かなと。彼にとっては車椅子は既に前提なので、諦めから始まるのが少し違うだけ。
作中の「歩けなくてよかったと思ったことはない。でもそのことでお母さんを恨んだことは一瞬たりともない」、これが彼の根底にあるからこそ(卑屈にならないよう育てたご両親も素晴らしい)、明里さんのような善き友人に恵まれ、そして冬吾さんという伴侶を得られたんだなと思うと、フィクションではあるけど、目頭が熱くなりました。
気持ちがガサガサしたときに、これからも何度も読み返す作品だと思います。心に潤いを求める方にぜひ。蛇足ですが、ふたりともかなーりラブラブしますよ。
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