スモークブルーの雨のち晴れ
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スモークブルーの雨のち晴れ

波真田かもめ

雨のち晴れの幸せ

ネタバレ
2024年7月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ MRとして切磋琢磨してきた久慈と吾妻。久慈の突然の退社。送別会後の、これ又、突然、久慈にホテルへと誘われます。性に割とオープンな吾妻は、さして抵抗無く受け入れますが、翌朝目覚めると久慈の姿はありませんでした。それから八年の時を経て、二人はその手のバーで偶然の再会。再び、身体を合わせ、「忘れたことはなかった」の久慈の独り言。ならば、何故に捕まえておかなかったと思ったところで、父親の介護問題を抱えていた身にとって、あの一夜はこの先を生きて行くための拠り所と自己完結した形。けれど、互いの縁は静かに再稼動します。BLに限らず、大抵の物語は楽しいラブ期でジ・エンド。でも、この物語はその先の、今は二年過ぎたところまで描かれています。徐々に互いの存在が空気の様に無くてはならない者となっていきます。日常を平和に送りながらも獣的刺激をスパイスに、二人の時間は同じ色に染まって、すでにビジュアル的には、夫夫。
久慈は父親介護や実家を兄に取られた形になるも、何一つ文句も言わず引き下がります。きっと本心は様々な葛藤が渦巻いていたはず。ですが、吾妻の存在が全ての理不尽さ、苦痛をすくい取ってくれるほど大きく、心を安定させたように思いました。この物語が非現実にならないのは、身近な問題を折り込んでいるからこその親近感があります。
能天気のようでいて根っこはマジメな吾妻と、堅実、謙虚の表顔に反して一途な、実は情熱家な面を持つ久慈。この先も、二人が穏やかに年を積み重ねて行ってくれたら良いなぁ~。
一巻から黙々と読んでいましたが、レビュアー様の素敵な投稿に刺激され書いてしまいました!
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