砂の城
」のレビュー

砂の城

一条ゆかり

永遠の名作

ネタバレ
2024年7月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 子供の頃に読みました。懐かしいなあ。多少なりとも色々人生経験を積んだ今では、子供の頃は理解できなかった登場人物の気持ちが(少なくとも以前よりは)理解できるようになったと思います。ナタリー達の結婚に反対したマリア叔母様の気持ちとか。ずっとナタリーを見守り続けたロベールの気持ちとか。ジェフへの愛を素直に表現できなかったジュラルディンの気持ちとか。ヴォージュを愛していたエレーヌの心が、なぜ急にミッシェルに向いたのか、とか。子供の私には分からなかったことか、今では分かります。そういったことを全部ひっくるめてこの作品を見ると、重くて暗くて、時には読むのが苦しいんだけど、それ以上に深い味わいのある作品だと思います。人生は確かに砂の城のように儚いけど、それだけじゃないって今では知っているからこそ、ナタリーの最期が一層哀しく切ない。でも、もうこれ以上「幸せ」という名の砂の城を崩される不安がない世界に、幸せな気持ちに包まれたまま飛び立ったのは、彼女の魂には救いだったのかもしれません。幸福とは、人生とは何なのかを読者に問いかける、永遠の名作の一つです。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!