このレビューはネタバレを含みます▼
幼少期、母の不幸な死を目にし、深い心の傷を負ってしまった貴族のルパート。その屋敷に、母の薬代を稼ぐため下働きに入ったノア。交わる事なき二人でしたが、ルパートの継母を欺くために、いきなり仮初めの恋人となり、何と初対面で有るにもかかわらずノアにキスをしてしまうルパート。アッ、こりゃもう心奪われたなと。だって、いくらその場凌ぎの恋人でも、ハグぐらいはやりましょうが、キスまでは、ねぇ~。でも、ルパートの気持ちもわかります。ページを重ねるごと、ノアのピュアで健気さが可愛くて可愛くて。お洋服も、何を着ても愛らしい。日々のご馳走に華麗な服。更に、ルパートの愛を知り、何不自由なき日常。私なら胡座をかくところですが、ノアはどこまでも己の立場をわきまえてルパートに尽くします。そんなノアがルパートの父に銃を向けるシーン。初めて自分の固い意志を吐露します。その真摯な愛に父親は根負け。私、ルパートのお父さん、ある意味、家の犠牲者と思いました。これだけの家柄、レベルを落とさず次世代に継承していくため己を捨てたと。今のルパートが幸せに豊かに暮らして行けるのは、父親や代々当主のおかげ。その現実を忘れてほしくありません。
さて、そこから二人の甘々生活の始まり、めでたし、めでたしのオンパレード、大フィナーレ。愛を求めたルパートに、愛を携えていたノア。BLと云うよりは、昔の少女文学のようでしたが、ちょっと疲れた時に、中世の御伽話に癒されました。エロのお口直し、汚れた心のお洗濯に、丁度良き一冊。おすすめです。