ブロンズの天使
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ブロンズの天使

さいとうちほ

純愛と犠牲と…

ネタバレ
2024年8月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 文学史で名前だけ知っていたプーシキン。彼の作品の数々を織り交ぜながら、プーシキン・その妻ナターリア・運命の「白い人」ダンテスの3人を中心に展開していく人間ドラマです。ナターリアが、プーシキンに出会い、求婚され、妻となり母となり、ダンテスとの道ならぬ恋に苦しみ、その結果のダンテスとプーシキンの決闘で夫を失い…作品冒頭ではただ美しいだけのお人形のようだった彼女が、様々な体験を通して、自分の意思と考えをしっかりと持った、成熟した1人の人間へと少しずつ変化していきます。物語の終盤近くで、皇帝から自分の愛妾になるよう言われて、それを自分の意思と言葉できっぱりとはねつけるナターリアを見た時、そして「強くならなければ…」と心の中で呟く彼女の涙を見た時、彼女の成長を感じ、そのために払われた犠牲を思い、泣きたくなった読者は私だけではないでしょう。この作品を読んだのはもう何年も前ですが、今でも強烈に印象に残っている作品です。そしていつまでも忘れられない作品となるでしょう。名作だと思います。
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