深潭回廊
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深潭回廊

永井三郎

足元に空いた暗い穴を前に動けずにいる気分

ネタバレ
2024年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 気軽に読んではいけない作品。5巻、ようやく底が見えた辺りでしょうか。

辛さでしか救うことの出来ない辛さがあります。
闇はそこかしこにあり、ともすれば人はバケモノになり鬼にもなる。前作で「俺を受け入れてくれ」と三島に縋った柳田は、渚に与えられたことでバケモノから人間に戻りました。しかし、渚を取り巻く大人たちはあまりにも汚く、無責任で醜い。かつての自分のように。またはそれ以上に。渚が取らざるを得なかった、己を守るための術が苦しいです。

南條くんが見た世界は変えられなくても、いま柳田の手は渚の手を掴んでいる。崩壊を前に彼らに何が出来るのか。

罪に向き合い、生きて救いのある世界をどうか渚に。だって子どもは本来守られるべき存在だから。これで良しとされる終わりがどんな世界でも、少しでも強くあって欲しいです。

4巻5巻の終わりには三島と夢野のなんてことない話が数ページ。本編後の冷えた心が温まるのでとてもありがたい!
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