穢れのない人【コミックス版】
」のレビュー

穢れのない人【コミックス版】

虫飼夏子

人には

ネタバレ
2024年8月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 単話で後日譚があることを読み終えた直後に知ることができてよかった…。上下巻二冊の内容だけでしたら、いい意味でフィクションチックというか、テーマに沿ってプロットがたてられてその通りに話が進む、その内容や意図について分かりやすく読み取りやすい物語を読んだなあ、という読後感でした。テーマは重いのに、登場人物のキャラクター性がはっきり確立されていて、話で示したいことが分かりやすいので、難解さや読みにくさがない。登場人物のやり取りと話の流れに重きを置いて、それ以外をばっさり切ったんでしょうね。手が止まることがないというのは、本を読んでいてストレスがないということなので、個人的にはすごく大切なポイントです。その反面、これだけ大仰な要素を盛り込んでおいてここまでか〜、みたいな拍子抜け感も拭えなかった。いろいろ掘り下げてたら何巻続いても足りない要素が多かったので、納得はして読み終えました。
単話の後日譚がよかったですね、人間の業を見ました。綺麗に〆られた後に、もう一次元上の世界で〆るような技だった。作者様の胆力はすごいですね!作品の扱いについての覚悟が決まってます。間引くべき要素の取捨選択について潔いというか。そうして研ぎ澄まされて出来上がったこの作品の形は、十字架なんかじゃないですよ、紛うことなき人間の形をしています。美しいとか醜いとか、悲しいとか優しいとか、そういう話じゃない。私たちは病める時も健やかなる時も、いついかなるときも人間でしかいられない。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!