深窓のこいびと【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
瀧本羊子
このレビューはネタバレを含みます▼
静かに切ない作品です。陰のある年上美人清水さんと、派手に見えるけど純粋で真っ直ぐな年下ワンコ土屋くんのお話。陰がある理由の詳細は是非ネタバレなしで。知人を介して知り合うも、遊びまでの関係を望む清水さんは土屋くんとの間に明確な一線を引いてきます。けれど適当にはいなせない。その時点で特別な相手になりつつあるのでしょう。過去の傷の少ない描写から伝わってくるのは、あらゆることを考え続けても答えは出ない絶望感。物語の軸をずらさないよう必要最低限な説明しかありませんが、お相手のご家族とも色々あったと推測できます。少しずつ死にながら生きることを望む清水さんの瞳は、とても寂しくミステリアスです。固く閉じられた深窓に、土屋くんが諦めずに足を踏み入れたことでその瞳は生きた表情に変わるのです。それが例え悲しみの表情だとしても、前を向くには必要なこと。土屋くんの願いと二人流す涙に感動します。ラストも確かな生を感じさせる静かで素敵な終わり方でした。特筆すべきは、土屋くんの一生懸命さと年下青年らしい可愛いらしさ!これは応援せずにいられません。悩みながらも、本当によく頑張りました。肌を重ねる場面での、真っ直ぐで熱い眼差しもとても良いです。清水さんもさすが大人です。描き下ろしは朝の幸せなひとこま。シーモア限定特典は二人のイラスト。約束通り行けたんですね。清水さんの表情が可愛いです。最後に、とても素晴らしいと断言できる作品です。おすすめ。
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