このレビューはネタバレを含みます▼
「ラムスプリンガの情景」のダニーのお兄さんの話。
最初から最後まで手抜きなし!吾妻先生のセンスが素晴らしい作品です。
冒頭に出てきた家族がまさにアメリカ。コケイジアンのお母さんにPOCなお父さん。そして伯父さんはコケイジアン…「この家族関係はどっちのどれや…?」と一瞬なりますが、これは作品を面白くするための伏線というわけではなく、家族構成だけでわかるアメリカ表現の妙、といったところでしょうか。そんな設定から楽しませてくれる作品です。
ドライじゃないとやっていけない世の中で、日々失われる人間性や自分の感情。これで良いのかと常に自問自答する様が描かれてなくてもきっと頭の中にはあるんだろうな、と想像を掻き立てられる読み味。そんな中で助けたジーン。
モラトリアム真っ最中の彼が、そんな複雑さを持ったトレヴァーを通して世界を広げていく様子が、普遍的なのですがハッとするというような… 当たり前の事を誰も傷つけず書かれているというか。
感想としては色んな言葉が頭の中にあふれて、モワ〜っとした印象をもたせますが、1つだけはっきりと浮かび上がる言葉は「愛」だと思いました。