このレビューはネタバレを含みます▼
漫画家の情熱の話、というレビューも散見されるけども、私は大事な友達を亡くした話だと思って、泣いた。漫画へのパッションの話でもある。でも、それ以上に、小さな田舎町で、漫画という共通の好きなものを通じて出来た唯一無二の友達。その友達を、頭のおかしくなる病気の人に殺された。そういう話だと思う。殺人犯については、実在の事件を3つ程ミックスして生成されている。おそらく、国内では京Aニ社屋放火事件と、アメリカの大学にマシンガン持って無差別殺戮立てこもり事件と、あともう一つ斧の事件があったはず。斧の事件は殺戮ではなく破壊だった気もするけど、記憶があやふやなので割愛。いずれかの事件についての、藤本先生からの追悼なのでは。もしくは、件の被害者の中に思い入れのある人物がいたのかも。それに、京本という味付けをしている。また、藤野のキャラに反感を抱く人もあるようだけど、藤野はイキリなだけだから愛おしい。藤野が大人になったら黒歴史として本人がめちゃめちゃ恥ずかしくなるだけで、誰も傷付けない素敵なキャラクターだよ。事件の話に戻るけど、一番色濃く題材にされているのは京Aニ事件だと思う。私もまた間接的に京Aニ事件の被害者に思い入れがある。京Aニ作品ですごく好きな作品があって、毎年映画やら何やらと課金していて、シリーズクライマックスに向けてスタッフが鋭意制作(企画)中という発表があって、しばらくしてからの報道だった。皆さんがアニメーターさんやスタッフの個人名をどれだけ把握してるかはわからないけど、私は好きな作品内で良い仕事をしてくれたスタッフは調べられる範囲で調べて名前を覚え、その人に贈るつもりで作品に課金をしてる。その年は友人と連名で社にお中元を贈る話をしていた。そういう大好きなスタッフが何人も被害者になった。その人にしか描けない絵がたくさんあった。まだ20代の人もいた。京Aニ公式から訃報が出るまで信じたくなかった。なかったことになれば良いと何度も思った。そうした当時の悲しみと絶望を、京本を想う藤野から感じた。藤本先生がどういう意図かは一読者の私には与り知らぬことではあるけれど、京Aニ事件への追悼として受けとめた。だって、名前も“京”本じゃん。藤本先生の同期が京Aニに就職してたかもしれないじゃん。て思うと他人事とは思えないんだ。みんな、一緒に泣いてくれ。