このレビューはネタバレを含みます▼
2巻まで【読み放題】で読み、とても感動するお話でしたので、3巻は購入しました。ここまでを大雑把に説明すると、2巻まではタキアとルサカを中心に物語の世界観を広げていく感じで、3巻はスピンオフ(番外編で二人も少し登場します)になっています。2巻までで、世界観が広がり謎も深まったままの部分を4巻以降で読むのが楽しみです。
初めての作家さんでしたが、とても読みやすい文体で、かなりしっかりした設定と世界観があり、読み応えがありました。各巻のあとがきを読むと、作家さん自身がしっかりテーマを決めていたのだなと分かると同時に、表現したかったものが伝わってきました。
2巻のあとがきで先生が仰っていますが、「群像劇だから好みが分かれるかも」というのは、私も同意見です。あと「ほのぼのしているように見せかけて、『お伽話』の残酷さを孕んでいるところも好みが分かれるかも」とありますが、私はそこは寧ろ物語に重厚感を与えていて良い面な気がしました。竜や騎士、エルフなどファンタジーには欠かせない魅力的な設定ながら、人の世の在り方・不条理を考えさせる重要な役割を担っていると思うし、単なるBLファンタジーで終わらない読み応えに繋がっているのだと思いました。それに、お伽話が本当は怖い…って、ある意味真実だと思います。
3巻では、読みながら「禍福は糾える縄の如し」という諺が思い浮かんで、当にそれを体現するかのような主人公の健気さに泣けてきました。私は特に3巻が好きで、主人公の名前や生い立ちなんかに、見落としてしまうくらい小さな伏線が幾つもあって、それらがとても丁寧に大事に、主人公の人柄を現すようにキラキラと綺麗に回収される様子に感動しました。物語の軸だけでなく細部まで、よく考えられていてとても素敵なお話でした。