このレビューはネタバレを含みます▼
片親のネグレクト家庭で育った少年が、懐いてしまった少年野球の監督から性加害を受け、守ってくれる大人のいない故郷から逃げ出してNYCのストリートにたどり着き、さらに凶悪な少年たちを売買する組織に囚われてしまう。なんとも恐ろしいのは、これが荒唐無稽なものではなく、ありがちな現代の転落ストーリーだということ。
主人公のアッシュは人並み外れた美貌と頭脳、戦闘能力を買われてこの環境を生き延び、少年ギャングのボスにまでなるけれども、ベトナム帰りの兄がこわれてしまった原因を探るうちに生物兵器にまでたどり着き、大ボスであるコルシカマフィアや華僑、傭兵団と苛烈な戦闘を繰り広げることになる。
作品に描かれる性行為は侮辱や支配の手段。アッシュは数知れないトラウマを抱えながら、殺人マシーンのように戦い抜き、大量の敵を殺めていきます。
そして、過酷な人生を生きる彼が求めていたのは無償の愛でした。その愛情を確信し、自分も新たな人生を求めることができると悟った時、彼の命は絶たれてしまう。
なんとも、なんとも残酷な世界の残酷な物語です。
それでも、アッシュは彼のような境遇の少年としては類稀な幸運児だという事実も心が痛みます。殆どの少年は病を得たり、薬物依存症になったり、精神を病んだりして未来を持てなくなってしまうようです。それどころか、臓器売買や薬物摘出の殺人目的で売買され、ゴミのように廃棄されていく子供たちも多いと言います。
私たちが生きる世界の闇のリアリティを凝縮したような作品。読むのは辛いですが、これがリアリティであると、私たちは理解しなければならないのです。