このレビューはネタバレを含みます▼
他社作品も含めて、3作目になるのでしょうか。他のレビューでもある通り、手法は判っているので二番煎じの感は否めず、です。ただ1作品として見ても、アリアの存在が都合が良過ぎる立ち位置ではないかと思います。国随一の才媛らしいが職業不明、父親が宰相の貴族令嬢の肩書だけで、何故か全ての関係者へのインタビューが障害もなく実現する。父親に捜査依頼される時点で「はい??」ですのに、捜査権限の証も社会的権力も持たない、セイナ様個人とも縁もゆかりもない赤の他人のご令嬢がですよ? 誰か対象相手ひとりくらいには完全黙秘されて嫌われたり、怒号を受けても良い筈です。ところが全員、ご親切にアリア嬢に心砕いて、お相手をしてくださっている。行間で才女らしい人心掌握的な話術や来訪手段があるのかもしれませんが、それら文面でカットされている以上、読者側には何も見えませんから、単純にご都合主義設定にも程がある、としか……。そういう点で面白味が薄い。果たして、このヒロインは物語に必要かな?と思いました。結婚否定主義もお気楽に留学や国外永住願望も父親公認の自由人が。後にセイナ様と相対して、簡単に身分格差の伴侶を得てしまう苦労知らずの令嬢が。セイナ様の高潔な生涯と儚い恋に薄っぺらな感想を抱いて欲しくない。この物語のヒロインは貴女じゃ駄目だと云いたい。王と王妃の醜悪な偏愛ぶりは、マチバリ先生らしい描き方で、ぞっとする落としどころ。お花畑で終わらぬ闇の残滓は、本当にどの作品でも凄味があり、マチバリ先生作品の好きな所です。しかし、まあ。代替えしても「婚約破棄」とか簡単にやってしまう王家が統べる国って、大丈夫なのかなと心配になりますね……。