シンデレラリバティ
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シンデレラリバティ

本郷地下

素敵な靴を履くと…

ネタバレ
2024年9月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「素敵な靴を履くと素敵な場所へ連れて行ってくれる」
欧州にはそんなことわざがあるという。
タイトルに込められた意味は作者さまが後書きにて解説されているので改めて考察するのは野暮ですが、わたしにはそんなことわざのようなお話に思えて仕方がないです。
サイコパス気質な兄・遼一と至極まともな弟・洋二、そんな水辺家の深き闇に巻き込まれる遼一の元同級生・ゲイの敦也が織りなす、遼一洗脳解除BL。
良心の欠落した遼一のもたらす加害は遅毒性で悪辣。その被害者である敦也がもし根に持つタイプで、生まれた時から毒されている洋二がもしメンヘラ依存体質に育ったなら、まずこの救済話は成立しない。遼一と一緒に溺れて、ドボンだ。しかし幸いにも、敦也にも洋二にも、自分で行き先を選ぶ強さが備わっていた。惹かれ合うようになってからは、なおさら。それに引きかえ遼一は、本能の赴くまま最後まで破滅的で楽な道を選び続けた。
頼みの両親は遼一の狂気にノータッチ。遼一の支配が強すぎて洋二が暴力の日々に屈してしまわないかハラハラしたけれど、敦也の持つ包容力と教養が地獄への後戻りを見事阻止した。敦也…いい男。
修正がきれいな白塗りで目がチカチカすれど、腕を縛ったり大人のホビーが出てきたりと、対戦は意外にハードで見応えあり。
もし絵柄がここまで少女漫画的でなかったなら、読み進めるのは困難なほど怪我の多いお話でした…が、素敵な靴を生み出した敦也とそれを履いた洋二は、素敵な場所へと歩きはじめたのである。

※「嗤う」という表現が出てくるのだけど、敦也はたしかに笑っているのに、「嗤」ってはいないんだよね。
笑うは喜びやうれしさを表す表記。
嗤うは、あざけることだから。ね、敦也(というか作者さま)には、教養がある。
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