魅力的なヒロイン、魅力無しの伯爵

ヒロインとヒーローの魅力の落差が激しい。
ヒロインが、不条理な遺言で後継から外されたあげく勝手に婚姻が成立済みという意味不明な状況下でも客観的に状況を認識・整理できる冷静さと、貴族の女として生まれた責務を全うしながら自身の理想の結婚に向けで努力を惜しまぬ姿勢、嫁ぎ先で任される業務を積極的に学ぶ勤勉さ、侍女との過去のいきさつに見る本当に大切なものをしっかり理解している価値観、領民との交流で夫の悪評を払拭しようとする人間性。上に立つものとして理想的で非常に魅力的な女性として描かれている。
対してヒーロー側は、母親からの婚姻を結んで後継問題に対処しろという再三の要求を自身のお気持ちで無視したあげくに強制的に嫁をあてがわれるという完全に聞き分けの無い子供に対する対応をされる、その婚姻相手を意地になって無視するために今まで以上に仕事を抱え込んで逃避、顔合わせもせず寝室にも帰らずという子供じみた対応をする、かと思えば嫁とエンカウントした途端に言い負かされたあげく好印象を抱くというちょろさを発揮。
ヒロインの強固な芯の通った意地に比してヒーローの意地がガキっぽ過ぎる。お前にはもったいない女ですよ、全くつり合ってない。
とにかく1巻時点ではヒロインの人間的魅力だけで面白さが維持されている。2巻でヒーロー側の事情が語られるのだと思うが、この状況から巻き返せる気がしない。この類の話でここまで魅力が無いヒーローというのも、なかなかに稀有だと思う。