月の子 MOON CHILD
」のレビュー

月の子 MOON CHILD

清水玲子

変わらない芸術作品と変わった自分の価値感

ネタバレ
2024年9月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 遠い昔、紙媒体で持っていたこの作品。ストーリーだけではなく、すべてのページが美しさで埋まっていたことを覚えていて、どうしてもまた読みたくなって購入しました。(さすがに今見ると微妙なのかな...)と思いつつページをめくると、そこにはまったく色褪せることのない洗礼されたままの画がありました。それを見ているだけでも満足なのに、キャラクターはみんな魅力的だし、ストーリーもまた美しくて。まだとても若かった頃にこの作品を読んだときは、「なぜジミーはショナを選ばないの⁉」「なんでアートなの⁉」などと思っていましたが、今は違う。ありのままの自分を大切に思ってくれて、一緒に泣いて笑って怒ってくれる、そんな情の深いアートが大好きなんだよね。ショナとセツの悲恋にも納得がいかなかったけれど、ショナが死ぬ前に心も身体も通じ合えた二人はハッピーエンドだったんだなと今は思える。憎たらしかったティルトや、ただウザいと思っていたリタもまた、与えるばかりで何も与えられることなく狂気に陥ってしまった悲しい人たちだと切なく思う。当時よくわからなかった作者の政治的思想も今では理解できます。大人になった今、もう一度読み返して良かったと思います。
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