雨傘で凌げないほどの恋
」のレビュー

雨傘で凌げないほどの恋

ARUKU

難しい問題をキラキラと真っ直ぐに

ネタバレ
2024年10月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人と人との架け橋となる道具「言葉」について描かれた作品。どの作品でも言葉を大切にしているARUKU先生なので、心に響くセリフや展開がとても多い。いつにも増して受け取れるもの、受け取るべきもので飽和状態です。他人から見た自分を表す言葉に傷付きながら生きてきた五映と、誰かから受け取った言葉の刃で五映を傷付けた天花寺。己の罪を何年も考え続け言葉で癒し償おうとする天花寺は、もともと人を思いやれる心の持ち主です。だからこそ葬儀で散華もするし、出されなかった手紙の言葉を預かろうともする。けれど棘のある言葉を使う人物から五映を守る天花寺の言葉もまた、正論かつ真っ直ぐな矢になりうる表現で描かれています。読み終えてもなお動く感情に、深い水の中に潜っているかのような気分。個人的には鍵原さんに痺れましたが、愛を意味する言葉のない極寒の国で生きる五映には、太陽みたいに晴々とした天花寺がぴったりとはまるのでしょう。一年後二年後と読み返した時に、自分が何をどう感じるのか。深いです。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!