百姓貴族
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百姓貴族

荒川弘

全くもって頭が上げられません。最敬礼です

2024年10月16日
凄く面白くて爆笑の話が盛り沢山の中に言いたいことがさらりと微かに入り、なのに、嫌味の欠片も感じさせない軽妙さ。楽しく、いつの間にか読むと社会を見るのにも“為にもなる”エッセーコミック。ほんの少~しチクッと突いてくる農家を振り回す畜産・農政・観光客への嘆き節、痛みや辛さもあるはずなのにポジティブで根明(ネアカ)なトーンでの苦労話の散りばめ方が、読んでいてたくましさや力強さを感じさせて実に格好いい。所謂自然の厳しさ、脅威も、スケールのまるで違う北海道という大きな世界の開拓のものすごさがそれでいて伝わる伝わる。そして生き物相手の悲しい事や、昼夜分かたずの世話に於ける悲哀でしんみりしたり、生きていくということはそれを前線で切り拓いている人たちあってのことだと痛感。全く頭が上げられなくなる。何だか知らなさすぎたことが恥ずかしくなってくる。自分は消費という末端で、表面的理解しかしてこなかった、と、よくわかる。農業高校編も引き込まれたし生徒や教師、教育環境に圧倒された。読み応えバッチリ、まだ完読まで数巻残すがその前に、途中で感動を伝えたくなってしまった。
子どもの教育にも(十代からの)もしかしたらとても素晴らしい副教材となるのでは?
少なくとも都市部に住む子ども達はこの書籍で何かが変わるかもしれない、そんな期待も抱かせる好著。食糧自給率の観点も草の根から皆が自覚的になるかも!そして実に深い。実は深いトピック数々あるのだ。防風林…。また、きれい事だけで済まされないのが生きているということなのだろう。そして生産調整、廃棄…。農業クラブ全国大会なんてなんかインターハイ?大文化祭?みたいで!
撮影での全焼エピに絶句。羊肉調達が!?飼料もだし、依存度が大きな課題だと思った。

私は荒川先生の著名な漫画作品を、日頃別の漫画畑に居ながらもこの耳にも轟いてる名声でかねがね読みたかったが、時間等種々勘案し本作から読ませていただいた。それも大いにアリかと思った。
(やっぱり超人的なおかただと読むほどに思う…。)

とにかく心から本書一読を勧める。ストーリー漫画ではないためいつでも何処でもこまぎれに読める。

2006年vol.8ウンポコ誌~2009年vol17同誌、同誌休刊後、2巻目からは同じ新書館内移籍し2009年9月号ウィングス誌~2023年8月号同誌。
最新第8巻迄読了!
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