ボーイミーツマリア
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ボーイミーツマリア

PEYO

ヒーローに出会いたいしヒーローになりたい

ネタバレ
2024年10月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ まずタイトルが秀悦です。シンプルイズベスト!
ヒーローって表層的なイメージで語られがちなものと、そのままの浅はかさで憧れてる大河の薄っぺらさ。でも人の笑顔の裏側にあるものを彼自身が早々に悟っていた事の裏返しでもある。
自我が芽生える前に性別を母親に決めつけられたという悲劇もあり有馬の人生は歪んだ形で始まる。
物事を直ぐ白黒つけたり断言する人って主語がデカくなりがちだけど、もちろんそんな簡単なもんばかりではなくて、男だ女だって2極化の問題を入口に、社会が脱却できないジェンダー意識が根っこにあるのが見えてくる。性同一性障害とか自分が知ってるカテゴリーに当てはめたくなる『分からない』曖昧な有馬の存在が周囲の不安を煽り、追い詰められてぶつかり合った先に2人は個としての存在意義を見出す。それは紛れもない希望で、その希望自体がきっと他の生徒たちもこれから知っていく、変わっていく可能性があることを暗示してる‥と思いたい。
有馬が襲われた時に助けてくれた人を直感的に大河の父親だと結びつけられたのは、メタ的なこと以上に自分がそうあってほしかったのかもしれない。あの日の大河の手を放した父親が、有馬へ手を差し伸べていて欲しかった。ヒーローなんて大体みんな仮面1枚分の殻を被って現れて、其の実中身は私達と変わらない悩みも沢山あるただの人間様なんだから。この作品だって誰かにとっての救いのヒーローになれるくらいのパワーがこもってて、読んで勇気をもらった人がまた誰かのヒーローに変身しちゃう‥そうなっても不思議じゃないくらいの物語だと思った。
テツと福丸も心強くて良い存在感!演劇顧問が電話したのって何だったのかだけが分からず、なんか見逃したか私?
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