悪役好きの転生令嬢はラスボス皇太子との溺愛エンドを目指します【特典SS付き】
逢矢沙希/敷城こなつ
このレビューはネタバレを含みます▼
中盤までは面白かったです。が、中盤以降、失速しました。盛り上がりにかけるというか、それまでに敷かれた伏線やら布石やらを淡々と回収していくだけの消化試合みたいな感じになってて、上手く話が膨らまずに終わったのが非常に残念。また、黒幕に救いのあるエンドだったのが個人的にかなりマイナス。自分の目的のために、ヒーローの親友の精神を(不可抗力とはいえ)乗っ取って殺した挙句にその名誉を地の底に落とし、恩師とその家族を殺し、その他罪のない人間を殺し、ヒロインももうあと一歩で殺せた、というところまで持っていった極悪人です。けれど黒幕本人の性根は悪人ではなかったせいで、ヒーローに許されて最後は救済があるというオチでした。大切な人を根こそぎ奪った人間に憎しみを向けることもしないヒーローが信じられなさすぎて、読後感があまりよろしくなかったです。いや、ヒーローはまだ理解出来たとしても、作品として極悪人が普通に幸せになって終わりそうなのが、エッ!?ってなったというか…。悪が悪として裁かれない話が苦手な人はモヤッとするかもしれません。特に私は、ヒーローの親友が報われ無さすぎて本当に悲しかったです。何故なら、親友の精神が乗っ取られたことを恐らくヒーローは理解出来てない&理解出来るはずのヒロインもそこまで考えが及ばなかったが故に、親友の中身が別人だという展開にならず、黒幕がやったことが全部、親友のやったことにされて終わったからです。というか、作者さんが多分、理解出来てない。異世界人に憑依する系の作品で、乗っ取りが問題視されることがあまり無いのと同じですね。悪役令嬢作品とか読んでてコレが引っかかる人は多分、この作品もモヤッとすると思います(ちなみにヒロインは憑依じゃなくきちんと同一人物な転生タイプ)。本来なら輝かしい未来があったはずの親友は、裏切りなんてしてなかったことも、人知れずひっそり死んだことも誰にも理解されず、ただの反逆者として処刑され、それをやらかした黒幕は普通に目的を達成して咎められることもなく生きていくっていう…巻き込まれた親友の家族も可哀想だなと思った作品でした。
いいね