雷々来世
」のレビュー

雷々来世

野白ぐり

癒しの作品 死を越えて繋いだ初恋かな

ネタバレ
2024年11月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ レビューを書こうとずっと思っていて、なかなかまとめられずにいた作品です。高評価通り一気に読んでしまう求心力の強い作品です。前世と現世を行き来しながらのストーリーは展開運びが良く、無駄がありません。胸を締め付けられ、嬉々とし、その世界に引き込まれました。
物語の比重としては前世が七割、現世が三割。
それだけ2人が惹き合い、別れ、そして再会と結びに至るまで全ての答えが前世にあります。現世の2人は前世の想いを抱いたまま、現世で謎解きのようにこの答えを前世に探す物語です。そこで読み込んで感じてしまったのが、現世の2人の存在感の薄さです。前世現世物で一般的に見られる「過去の自分ではない今の自分だからこそ越えられる壁」という「前世を越える現世」の展開がありません。理由も結果も全て前世にあるという構成で、加えてしまうのであれば、前世で別れた時、2人の時間はそこで止まって、そのままタイムリープしたのではないかというくらい、前世での世界観も2人の別れで途切れます。ですが、5。星の数は正直迷いましたが、足りなさに気づいてもそれでも読み入ってしまう強さがこの作品にはありました。何度も繰り返して読んでしまうその強さのは何なのか、本当に考えていたんですか、答えは単純で2人の一途さとしか言いようがない。死を超える想い、ファンタジーですよね、本当に。BLがファンタジーと呼ばれる1つは、「純愛さ」だと思っています。
どこまでも相手を想い続けた2人に癒されました。この短い1冊という本に前世から繋いだ愛を描き込むのであれば、確かにヒューマニズム的なものは蛇足と気づき、寧ろ他のテーマに安易に手を伸ばさず、100%「純愛」だけを描き切った作者さまに感謝ですね。
いいねしたユーザ6人
レビューをシェアしよう!