このレビューはネタバレを含みます▼
人間の感情を養分とする「あかしびと」、物語は割とずっしりとしていますが、題材としてはとてもロマンチックなものに感じました。「喜怒哀楽の中でも不幸の感情が一番美味」という設定は、本物の愛を見つけた後「相手に幸せになって欲しいのに自分の身体は不幸を欲している」という対極の矛盾を乗り越えた者のみが魂を授かり、一生を添い遂げられるという仕組みの説得力をあげていると思います。そう捉えると、絶対に触れてはいけない「愛」に触れてしまった時の痛みは、もはや「シロ」が人として誕生するための陣痛のようなものだったと捉える可能なのではないか…と勝手に思いました。ますますロマンチックに思えてしまいます。通じあった2人はこれから協力関係では無く1対1の対等な恋人として幸せに過ごすんだろうなという確信に近い期待があって、とても心地の良い読了感です。