彼は『これ』は復讐ではない、と言った
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彼は『これ』は復讐ではない、と言った

高井唯人

謎多き復讐劇

ネタバレ
2024年11月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校時代、棋士の卵であった小嶋龍吉に執拗な暴行を加え、弄んだ末に人生を破壊した六人組が正体不明の存在により、復讐(敵討ち)と冠して次々と制裁を受けるわけだが、尖兵役の渡辺と副主犯格の田佐中が輪をかけてクズであり、社会においても害しかないので、この二人が報復されて虫の息となった状態で負け犬の遠吠えを放つシーンは、何度も読み返しては笑ってしまうほど愉快極まりない。快楽のために暴行を働いた末、いざ我が身に返ってくるとなると反省どころか「殺しておけばよかった」などと捨て台詞を吐いたり、悪党の仲間とは言え自業自得の末、性格同様の化け物顔にされたことを心配してくれる存在を嘲り、見下し、八つ当たりを行うなど不届き千万。ついでに女優は演技力が命であり、お化けの役で生きていくことも可能であろう。こんな身勝手な奴は女優の風上にもおけん。逆に変質者の北井とチンピラの大久保は自身の欲に振り回された挙げ句、勝手に暴走して自滅した印象を受けるのであっさり感があり、むしろ彼らの馬鹿さ加減に呆れてしまうところである。また、年齢を重ねて妙に男前になった北斗、少年漫画のライバル的な雰囲気の角松、当事件の加害者を感情的に理解しつつも犯人を追う山さん、小野川と言った龍吉を取り巻く環境がほどよく犯人像を攪乱し、サスペンス要素に花を添えている。そして拳銃を入手し、この状況を楽しんですらいるようにも見える主犯格の渋根。和田へのプロポ―ズと光の存在。18巻現在、謎が深まる今が一番面白い時期なのかもしれない。
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