ロッカバイディア
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ロッカバイディア

暮田マキネ

無償の愛

ネタバレ
2024年12月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 幼馴染の累と八尋。
実母から虐 待を受けた累は、引き取ってくれた義父母に報いるよう優秀な成績を取り続け聖人君子のような子に育った。
でもそれは義父母に認めてもらえるように累が必死で身につけた鎧であり鎖であると知る唯一の人物が八尋で、とにかく累が大切で第一優先。義父母では埋められない寂しさを全て引き受け、累の承認欲求と八尋の奉仕欲求のバランスを何とか保ちながら生きてきたが、それが崩れ始めたきっかけが義母の妊娠だった。
実子が産まれたら自分は?
両親に見棄てられる不安が人一倍強い累。まともでいなきゃ失望される、同性の八尋と身体を繋げている自分はまともじゃない…。
義父母にとって養子である自分は他人だと言い切っているのが悲しかった。これ確実に義父母も悲しむ。引き取られてからの8年間で「何があっても2人は自分を捨てない」という信念が得られなかったのが不憫でならない。
両親に落ち度などはなく、一貫して無償の愛を注いでくれているこの義父母は素晴らしいと思う。ただそれだけ累の心の傷は深く、自分を追い詰めてしまったんだな。

マキネ先生の描く目がまん丸の男の子は、すごく可愛く見える時とゾッとする時とあります。
今回も病んだ累を見て思いました。
この時の八尋は医者以上だった。相当な精神力と愛情がないと出来なかった対応だと思う。
累は「愛されたい人」だけど、八尋は「愛したい人」なんです。ただただ累を喜ばせたい、笑わせたい、助けたい。本当にこの愛の深さには累が羨ましくなるほど。
累が絞り出すように言った「たすけて」という言葉は、八尋をもどれだけ救ったことか。この言葉が魔法のように、累自身を縛っていた鎖を解いていった。累よく言えた。

今回の作品も闇に震え、その後の救済に涙しました。この落差に毎度やられる。何回でも言います、傑作です。
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