鳴かぬ蛍は青に焦がれる
」のレビュー

鳴かぬ蛍は青に焦がれる

仁嶋中道

人の為と書いて偽と読む

ネタバレ
2024年12月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 自分の受け入れられないものを目にしたとき、ただそこにあるものとして尊重できる人はどのくらいいるだろう?
大多数が嫌悪や憐憫、処理しきれない自分の気持ちを相手のせいにして目を逸らすのが関の山だというのに、青凪と宇佐美は自然と尊重ができていて実に達観したお似合いのカップルなんじゃないかと思う。

皮肉にもそんな青凪と宇佐美がくっつくきっかけとなった明石さん。青凪と2人ならもうちょっとうまく交際できただろうけれど、たくさんの人と関わるとなるとそうはいかず…自己肯定感高めな青凪と他人の目が気になる彼女とでは、気遣いの何もかもが逆作用してしまう。大好きな彼氏の腕に、見慣れない青い痣。青凪を庇うことで安心するのは人目を気にする彼女自身なのであって、当の青凪はありのままでいられずどんどん自信を失っていくのであった(のちに彼女は大の大人でさえ取り組むのが難しい超的確な自己分析と猛反省という偉業をJKにして成し遂げる)。
一方で宇佐美には同性というハードルが立ちはだかっているため、早い段階でいろんなことに気づいていながら青凪を奪うに奪えないジレンマに悩まされるのがまたいい。
覆い隠すことに必死な明石さんとは対照的に、青凪の大事にしているものも丸ごと大事にする宇佐美。青凪がわだかまりを捨てて惚れるのもわかる。

抜き合いのみで合体はなし。キリはいいけれどある意味いいところで終わっているので、『キミドリ』みたいな甘い番外を待っています。
メッセージ性に定評のある中道先生。
今作も素晴らしかったです。
いいねしたユーザ17人
レビューをシェアしよう!