ワンダーフォーゲル【SS付き電子限定版】
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ワンダーフォーゲル【SS付き電子限定版】

草間さかえ

読めば読むほど味が出る

2024年12月22日
放浪先の沖縄で野宿を続けていた男が、台風の避難先で小説家の家にお世話になることに。不思議な力を持つという小説家と閉所恐怖症の男との嵐の一夜から生まれた恋のお話。またその人物が関係者として登場する前日譚的なお話。
この感想を書いていて改めて気付かされるのが、この作品は2つ目のお話「ワンダーフォーゲル」が主軸なんだということ。それをくってしまうくらい最初の「みえない友達」が難解すぎて、噛み砕くのに必死になってしまいました。一度読んだだけでは内容がさっぱり分からない上に、登場人物が誰が誰なのかを区別することも難しい。一体何の話をしているのか、どんな関係性なのかも分かりづらく、何度もページを戻ったり、名前を確認する作業を繰り返した人は多いはずです。だけど、何度も読み返し、色々な人のレビューを参考に考察していくうちに、驚くくらい話の内容がクリアになるから不思議です。良く理解した上で読み返すと、今までちんぷんかんぷんだったのが逆に不思議になるくらい話の内容がスッと入ってきて、描かれるべきところはきちんと細かく描かれているし、話す内容も過不足なく的を得ているのがちゃんと読み取れます。こんな不思議な体験は初めてでドキドキしました。自分がこの世界に入り込んでいけるかどうかが理解力に表れるなんて、作者様の漫画は本当にすごいと思います。
このお話には続編があり、考察したものが結実し、ストーリーとしてきちんと補完されるだけでなく、「みえない友達」をよりクリアにする展開になっています。ぜひセットで読んで欲しいです。
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