東京ヒゴロ
」のレビュー

東京ヒゴロ

松本大洋

変わりゆく時代に取り残された人々の再生

ネタバレ
2024年12月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み始めでは、この世界観になかなか入り込めずページを行ったり来たりしながら何回も読み返しました。
大手出版社に勤め、漫画編集者として作家さんたちにも認められていた主人公ですが、立ち上げた雑誌が2年で廃刊になるという状況で、なんとなく自分自身に後ろめたく、辞職して退社するところから物語は始まります。
降り出した雨に、風に、傘を吹き上げられるシーンが印象的で、コレが最後の最後で光ります。
編集者と漫画家・・・作家さまが漫画家であってこそ書き上げられた作品なのだと思います。
どちらの側の立場であっても、自身の信念を微かに胸に抱えながら、生きる事があまり上手くない、様々な個性を持った登場人物たちの、背景と、もう一度ペンを手にしてみようと決意する姿は、全てを詳らかにしない、一話一話の最後の場面が、一枚の原稿に大きく描かれる風景で、読者が感じとるモノなのかもしれません。
紡がれる言葉たちも秀逸でした。
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