愛とは与えるものだから【特別版】
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愛とは与えるものだから【特別版】

中原一也/奈良千春

この「さよなら」は再び会うまでの遠い約束

ネタバレ
2024年12月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ シリーズ6作目、一応の完結です(このあと斑目弟のスピンオフがあります)。最終巻に相応しく、あらゆる意味での総集編・総決算という内容でした。斑目の街からの卒業という大きな悩みがあり、そちら一辺倒でありたい心理を逆撫でするかのように「行かないでくれ。側にいてくれ」と縋りたくなるようなピンチの連続で、坂下だけでなく読者の心まで疲弊していったように思います。
そんな状態まで打ちのめされていたところで、率にしたらほんの数%の希望から一気に形成逆転した手法は鮮やかでした。そのシーンでは、自分の利用価値を正しく理解している斑目のクール・クレバーさにやられました。
そして斑目の卒業…二人の大きな夢を叶える為、未来への希望を持っての旅立ち。「いつか」は来るものだと分かっていても受け止められなかった坂下が、やっと一歩踏み出せたようで安心しました。坂下の家族とのやり取りも重要な一歩だったと思います。
読み終えた時、別れであってもどこか清々しいものを感じて、ある歌の歌詞で…「さよなら」は別れの言葉じゃなくてー再び会うまでの遠い約束ー…が、頭の中に流れました。毎巻興味深いストーリーであることは勿論、シリーズを通しての起承転結もしっかり練られていて、心に残る作品でした。
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