このレビューはネタバレを含みます▼
日高博生は、8つ年上の兄•直生が交通事故で亡くなる直前に電話をもらっていました。直生は吃音があり、学生時代に家を出て卒業してからは男性と暮らしていたため、両親とも弟の博生ともほとんど交流が無く、博生は兄からの最後の電話にも出ませんでした。その博生が荷物を引き取るために直生の暮らしていた部屋を訪れます。夏の暑い陽射しに眩暈を起こしかけた博生は、そこで腕いっぱいの向日葵の花を抱えた直生と鉢合わせします。博生はいつのまにか6年前にタイムスリップしていたのでした。博生は兄の部屋を何度も訪ね、訥々と語る兄の話から兄がパートナーに愛されて夢をもって前向きに生きていたことを知ります。こちらの1日が元の世界では数年にあたり、兄が事故に遭わないように注意するか迷ううちにタイムリミットは過ぎてしまうのでした。2年後、宅配会社に就職した博生は、兄のパートナーだった美郷の店に配達で行くようになります。そして8年前の不思議な夏のこと、直生という人間について話すようになります。家ではいつも自信なさげにひっそりと俯いて生きていた直生が、恋人の側で向日葵のように、すっくと明るい未来を見つめていたことを博生は知るのでした。決して過去へと流れることのない時間という不可逆な流れの中で、あの夏の向日葵がくっきりと浮かび上がります。完結が待ち遠しいです。