ジェラールとジャック(白泉社文庫版)
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ジェラールとジャック(白泉社文庫版)

よしながふみ

歴史ものは安心してお任せ出来る

2025年1月11日
フランス革命前夜のパリを舞台に、没落貴族の少年と三文小説家の平民の愛の変遷を描くお話。
「大奥」と同じように、こちらも歴史の流れを取り入れた作品。歴史ものを扱う時は、その舞台や背景、その時代の考え方など、どこまで取り入れてどのように見せるかが難しいところではありますが、よしなが先生の作品では安心して読めます。今作もフランス革命前夜のパリという貴族が栄華を極めた時代と、平民が力をつけてきた時代、その革命がひっくり返る時代の境界線をお話の起承転結に活かす手法は見事だと思います。その上で、そんな貴族よりもお金持ちになった平民のジェラールを主軸に、男女の恋にばかり溺れる典型的な貴族としてナタリーを登場させたりと、この時代をとても上手く描いていて、BLとして、愛のお話としてだけでなく、歴史ものとしても面白く読めました。
でもお話の核はジャックとジェラールの愛の変遷で、男娼と客として出会った貴族と平民が、主人と下男になり、互いのことを知るうちに親子のように大切にしたい存在となり、最後は恋人のように愛し合う。その過程でお互いを特別に思うようになるのが一つ一つきちんと実感出来る。この描写力は流石としか言いようがありません。ページ数からは考えられない程のお値段も魅力的。ぜひもっと多くの人に読んでもらいたい作品です。
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