ロングピリオド【単行本版】
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ロングピリオド【単行本版】

古矢渚

寒がりの寂しがり

ネタバレ
2025年1月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 幼なじみの片恋ものだからもっと重い読み心地を想像していたのですが、絞られた文章量と見やすい絵柄でさくさく読めました。すごく良かった!結構がっつり泣いてしまいました。
佑征さんが樹さんへ抱く思いを漠然と諦めているのは、やっぱり同性だからという理由なのでしょうか。嫌われたくない、関係性を崩したくない、明言されていないのでいろいろ考えました。臆病さ故なのか庇護故なのか、正確には分かりませんが、そこを切り裂いてずかずか割り込んでくる樹さんの潔さが気持ちよかったです。この物語が鬱屈しすぎない内容に仕上がっているのは、佑征さんがじめついていると樹さんが引っ張り出してくれるし、樹さんが凹んでいると佑征さんがそばにいてくれるからだと思います。属性的には、ヘタレ片恋と天才型自由人、みたいな組み合わせ。
孤独の話が好きなのですが、樹さんの誰にも理解されないであろう寂しさの傍らに、佑征さんだけが寄り添ってくれたのが、本当に温かくて優しくて、気づいたら泣いてしまっていました。佑征さんの優しさは、樹さんのためだけに考えて迷って施された慈しみです。裏表のない本心からの全肯定が、樹さんを癒してくれたのが、救いでよかった。天才は孤独だと言いますが、天才だろうと人間だし人間は孤独で死ぬ生き物だから…。最終的に佑征さんが樹さんにちゃんと向き合って結論を出してくれてよかったです。あと、お二人の触れ合いが本編内では最小限に留められているので、最後あたりの熱を孕んだやりとりだけで満足値が高い。ぎゅっと詰め込まれたきゅんを感じました。
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