高橋留美子傑作集 金の力
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高橋留美子傑作集 金の力

高橋留美子

安定感と昭和感の枯れたオジサン短編集

ネタバレ
2025年1月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 210ページ。
ビッグコミックオリジナルで年1掲載される短篇を集めた6作入り。すでに超大御所なのにこうして短篇を発表してくれるのは、短篇好きとして嬉しいところ。
往年の勢いは無いかもしれませんが、ものすごい安定感といい感じに転がる巻き込まれ話、そこはかとない昭和感、やっぱり読みたくなります。
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・『ふたりの家』舅と同居する男やもめ。家事代行サービスの若い女性が与える生活の潤いと、バカバカしくもささやかな妄想。星4つ。
・『きみはNo.1』年寄りの愚痴やらなんやらを聞く「デトックスサービス」に勤める男の巻き込まれるちょっとした騒動。このサービス、大変そう〜。星4つ。
・『嫌なランナー』銀行勤務の男の前に現れる、小さな走るおじさんの姿。銀行がらみの事件と、ちょっと不思議な話。
・『昔の女』マスク姿で現れる謎の女の霊。掘り返される過去の出来事と熟年夫婦の危機と。コロナ禍中の作品だからマスク。
・『Sに捧ぐ』亡くなった同級生に預けられた指輪。「S」っていったい誰なんだろね?という話。この同級生、彼女取ったり歌手になったりコワイ人に追いかけられてたりととんでもないんだけども、そんなのでもどこか憎みきれないという主人公の人の好さよ。星4つ。
・『金の力』定年後、犬の散歩を機に会えたかつての憧れの女優、とその旦那。旦那に巻き込まれてのひと騒動。元女優がさっぱり強くて好き。
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高橋留美子(偉大すぎるので敬称略)は天才だと思うんですよ。
ときたま耳にする「少年マンガ描きの女性作家は男性名にしないと」とか「実際に経験しないといいものは描けない」とか、そういうのに全く目をくれずにすべて蹴散らす圧倒的なチカラ、とにかく描き続ける圧倒的な体力、イメージとしてはコース上にあるハードルを全く気にせず(あることにも気付かず)ただ進んで行く巨人です。
これこそが天才だと思うんですよね。
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