今度は死んでも死なせません!
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今度は死んでも死なせません!

海野幸/十月

何もかもが良かった

ネタバレ
2025年1月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ お話としては、昔別れた攻めが死んでしまい、受けが過去に戻って今度は死なせないように頑張るというタイトルどおりのものです。
テーマとしてはありがちですが、すっごく面白くて夢中になって読みました。どこが良かったか書こうにも全部!てなっちゃって困るくらい良かったです。読んで良かった。きっとこの先も何回か読み直すんだろうと思える作品です。
文章も読みやすく上手で、なんというか無駄なくテンポよく進んでくれて、でもダイジェストな感じはまったくなく、すごく濃密な物語でした。いらないシーンも描写もなく全てが繋がってるというか。
基本的にシリアスなんですけどくすっとくるところもあるし、苦しくて泣きそうになる場面もじーんと暖かい気持ちになって泣きそうになる場面もあって、映画みたいでした。
社会人経験を積んで昔より図太くなった受けが、攻めを死なせないためにがむしゃらに頑張ってるのも良かったですし、そんな殻を破った受けの姿に、決別しようとした執着心を刺激されてずぶずぶはまっていく攻め…とても良かったです。
元々の付き合った経緯も、攻めは受けのこと恋愛的には好きじゃなかったけど告白されて放っておけなくて…というのも攻めの性格からするとなんかリアルだし、そこで攻めに無理させてしまったとずっと自分を責める受けと、付き合ってから受けに惹かれて(この好きになった理由も攻めのお人好し性格からの空虚さを受けが埋めてくれたって感じで良い)、ちゃんと好きになったのに想いが通ず別れを決めた攻めも良い。なのに巻き戻ってきた受けに友達で良いから!と縋られ交流関係を広げる姿にそりゃ気が気じゃなくなるよなと。
何が受けをそんなに変えたのか気にする攻めにあなたのためだよー!!と言ってあげたかったし、どこかで伝えるかなとワクワクしたのに言わずに終わったところが唯一の残念ポイントですかね。でも実際そんなファンタジーなこと言えないのも分かるのでしょうがないと思います。
それぞれの家族もよかったな。優しい伯父伯母には何回か泣きそうになったし、攻めのお父さんお母さんの反応もリアルで良かった。あの年代のお父さんが男同士を受け入れられないのも分かるし、そこから攻めに怒られて思うところはあれどプレゼントされたドック券使ったり黙認してくれてるのが、価値観が違いながらも優しいお父さんって感じで良かったです。
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