ポルノグラファー 単行本版
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ポルノグラファー 単行本版

丸木戸マキ

テンプレ感ゼロ流れるようなオリジナリティ

ネタバレ
2025年1月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 久しぶりにシリーズ3作を一気読みしました。書けなくなった小説家、木島理生(りお)と関係を持つ男性が2人出てきます。一人は昔の相手で城戸。彼もかつて小説家を志していたが、理生の作品を読んでその道を諦めた。城戸は理生に敬意と嫉妬、両方を抱えていた。もう一人は、現在進行形で物語のなかで関わりが描かれる久住晴彦。若く、明るく、ひねておらず、あたたかい。この3者のありようが、とても好きです。理生は、人間関係も自身のことも諦めているかのようで、信じたい気持ちもどこかあるのか人を試す行動を繰り返します。一見すると信じられない迷惑行為の連続なのですが、どれも本人は無自覚ながら「助けて」とすがる必死の表現なんだろうな、と今回再読して思いました。なので、城戸と久住のふたりがいて(周りの人々もいて)良かったな〜、としみじみしました。1回目で読んだ時には、理生の官能性にどぎまぎと振り回されましたが、今回は、理生の成長譚として再読しました。
人がやたらと怪我や病気になって話が展開したり、官能小説家の代筆という設定などはいかにも漫画らしいと言えますが、言葉遣いも話の密度も人物像も、お決まりのテンプレートが使われていると思わされるところが全然なく、作者の方のオリジナリティがセリフにも話の進行にも水が流れるように自然に、潤沢にあふれていて、創作物としての世界観をしっかりと立ち上がらせていました。読んでいて、きっとそのおかげで、満足感がありました。たくさんの人に読んでもらいたい作品だなと思います。
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