かみさまの贖罪
」のレビュー

かみさまの贖罪

大塚素

生きることを選ぶということ

ネタバレ
2025年1月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1〜4巻194、5巻242ページ。
親に敷かれたレール上を生きてきた空虚な主人公・空室、両親を目の前で殺されて復讐に生きる娘・松明。この二人を中心に、SNSを通じた人間模様が描かれた作品。
慎重さのある作風で、善悪の押し付けや派手にしようとする感じがなく、無闇に色恋に持っていく方向性でもなく、私の好みでした。
各キャラクター、それぞれに実在感があって良かったです。2巻から3巻にかけて描かれた、親との問題を抱えた少女二人のエピソードが一番好きで、それぞれの温度差だとかそれでも出会えて良かったねとか、ここに出てくる父親の描き方も良かったなと思います。
そして、復讐は完遂されて然るべき派の私、松明を追う警察の二人には、もうやめて〜ほっといてやってくれよ〜って思いながらハラハラと読んでました。正直、松明には、「よくがんばったね、あなたが苦しむ必要なんて無いよ」って感想しかない。たとえ、彼女の両親を殺した男にどんな事情があったとしても。
さて、作者さんによると、まだまだ描き足りなかったところも多いというこの作品。打ち切りということなんでしょうかね。
確かに、ラストに唐突感があったり(そこらへんで星マイナス)(ただその展開にした意図はわかる気がするし作者さんの人間の描き方からすると自然でもある)、不足感は否めません。が、作者さんの満足するまでエピソードを描き続けたら不必要なまでに長くなりすぎる可能性もあり、作者さんの力の限りまとめたというこの作品は、これが最良の形であるようにも思えます。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!