リハーサル
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リハーサル

ARUKU

世界で一番近くにいた大切なひととの別れ

ネタバレ
2025年1月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 25頁の短編。真夏の昼下がり、20歳の医学生•城崎優彦の元に突然、隣家の幼馴染•鈴村紡が訪れます。ガンで入院治療しているはずの紡は、自分の葬式のリハーサルをしたいと言います。葬式の夜、自分のお骨を盗み出して思い出の品々とともに、いつも二人で遊んだ海辺でお別れをして欲しいと頼んでくるのでした。紡の身体は確かに温かいのですが、明るい陽射しの下、紡には影がありません。口にすることも出来なかった初恋と別れ、そこから淡々と積み重ねられる月日とが、眩しい夏の太陽とひまわり畑にくっきりと浮かび上がります。死ネタですが、作者さま独特の世界観が滲むファンタジーは、私たちがこの世と呼ぶ世界こそリハーサルではないのかという不思議な感覚に陥ります。
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