このレビューはネタバレを含みます▼
どこの精神科医が言ったか…エヴァンゲ○オンに登場する人物は全員アダルトチルドレンなのだそうですが…
この作品もそれに引けをとらないほど登場人物全員が心に傷を抱えたまま「普通」とか「大人」を装い生きていて、素材はいいのに身なりの汚いチンピラ菊池の“寄越した“トラブルをきっかけに様々な決断を迫られ、それぞれが選択のカードを“めくって“いく。
成育環境のヤバさや病み具合を怪我にたとえるなら、新谷(攻)は捻挫、菊池(受)は骨折、須藤(受)なんか脊椎損傷くらいやっかいなことになっています…だからこそ魔性と化した須藤を推したくなる読者さんも多いんじゃないだろうか。
そもそも物語の舞台が反社の経営するカジノバーだから、少しでも利用価値のある人間は地の果てまで追いかけられては吸い尽くされる。それを承知でその世界に足を突っ込んでしまった人たちなのである程度の根性はあるわけだけれど、代償はあまりにも大きい…それが、4巻までの感想。
結果トラブルは須藤がすべてのケツを拭く形で終結。ラブの方は鼻の差で菊池に軍配が上がったのですが、わたしはそれが妥当だと思いました。
なぜなら…須藤は打算で新谷に関係を持ちかけたけれど、菊池ははじめから捨て身で誠実に向き合ったから。
新谷にとって素直な菊池は心を温め合える相手となり得るが、拗らせすぎている須藤はケアの域を出ないのかもしれない。須藤も、自分で幸せをぶち壊した感があるしね。
普通の人にとっての日常は彼らにとっての天国なので…健康で文化的な最低限の生活を営む権利を享受することが人生のゴールになってしまっているような切なさだけは番外編でも拭いきれませんでした。
のばら先生…ものすごい(としか言いようがない)作品を生み出してくださりありがとうございます。フィクションだし存在しない人たちなのに、この先何度も彼らの生き様を思い出してしまいそう。