本なら売るほど
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本なら売るほど

児島青

色褪せても魅力的な古本達。

ネタバレ
2025年2月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私の母は変な潔癖症で、図書館の本でも借りてくるのを嫌がりましたが、その娘は古本好きで、衰えた紙質、シミや独特の香りが好きでした。
昔は何軒もあった町の古本店。チェーン店とは異なり、実に個性的な店主もいて、売れても売れなくても、どっちでも良いと商売っ気無い店では飽きること無く居られました。 母は新刊買うお金をくれましたが、新しい本て真っさらで色気がないんですよね。 古本を手にして、以前はどんな人の元にとか、どんな運命でこの店まで流れついてきたのかと、本の内容よりも思い巡らすのが好きでした。 この作品、買うのを迷っていたら、フォロアー様のレビューで決断。 そうしたら何と、森茉莉さんの枯れ葉の寝床ですよ~。1962年発行本は、今も手元に有り宝物です。
第5話のお嬢ちゃん。 先ずは、きちんとした基本の着付けを身につけた上で着崩していく。 着崩しはだらし無いと感じられては野暮。 着物は直線断ちなので、身体が着物に添っていくこと。 普段着なら分厚い草履やコンクリートではうるさい下駄よりも雪駄。 明治のように靴も良いかも。古着物は持っていた人の身体に馴染んだ物だから、いかに自分好みに変えていくかも楽しみ。 と、祖母からの受け売りでした。 物語はオムニバス形式で、それぞれおもしろかったですが、私にとって絶対に許し難かった内容の6話。 純朴そうな美大生の南という若造。 旧店主は、本好きに見えた南に、よくおまけをしてあげました。 頻繁に通っていた彼が制作発表が忙しいと足が途絶え、その発表を見に行くと、、、。 こんな仕打ちが有りましょうか! バベルと名付けられた南の作品。 目にした瞬間、この店主と同じ衝撃を受けました。 と同時に、こんのク◯ガキー! 店主は、ただ本を売っただけと内省。 南は、いずれ破棄される古本を作品に替えただけ。 それでも、店主の善意を踏み躙り、存外したたかな南にはバベルの塔同様の神の怒りが下される事を切望しました。 そのまま捨てられた方がどんなに良かったか。 クシャクシャにされ、セパレートされた本が辛かった。 もしも続きが有るなら、その内容を知った新店主が、胸のすく采配を振ってくれるシーンを読みたいものです。
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